民法賃貸借契約規定も随分と改正されてました。

公開日 2020年11月23日

学生時代によく眺めていた 民法
久しぶりに眺めていたら 賃貸借契約も随分と改正されてました。

賃貸借契約って 明文はもともとは少なめで 借主と貸主の意思が重視、つまりは双方の合意ですべて決まる
もめ事が起きても 裁判例を参考にして 事例に合わせた解決をする
と 教わってました。

ただ ここまで詳しくなると こん今後は貸主借主の意思よりも 規定や裁判例が重視され
あっさりと片付けられてしまう 気もしてきます。

根拠条文があるのは明確で良いことの一方、時に所有者権利者の考えをないがしろにすることもありますね
 

民法第605条の2 – 不動産の賃貸人たる地位の移転

  1. 前条、借地借家法第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
  2. 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
  3. 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
  4. 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する

    解説をかいつまむと
    改正前は
    「物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる」という規定でしたが
    これに
    1.賃貸人たる地位の移転
    605条又は借地借家法等により賃貸借の対抗要件を備える場合において、賃貸人がその土地を第三者に譲渡したときは、新所有者はその賃貸借契約に基づく旧所有者の権利義務を承継し、旧所有者は賃貸人たる権利義務関係から離脱するという判例法理が明文化されました(1項)。

    2.また、新所有者は、所有権の移転につきその登記を経由しなければ、賃貸人たる地位を主張することができないという判例法理も明文化されました(3項)。

    3.賃貸人たる地位の留保
    上記のように賃貸人たる地位の当然承継が生ずる場面においても、旧所有者と新所有者との間の合意によって賃貸人たる地位を旧所有者に留保するというニーズがあると指摘されていました。他方で、賃貸人たる地位を留保したまま賃貸不動産の所有権のみを移転させると、賃借人は所有権を失った旧所有者との間で転貸借等の関係に立つこととなってしまうことから、このような賃借人の地位を不利益にも配慮する必要があります。
    そこで、賃貸人たる地位を留保させるためには、旧所有者と新所有者との間で、賃貸人たる地位を留保する旨の合意に加えて,新所有者を賃貸人、旧所有者を賃借人とする賃貸借契約を締結することが要件とされました。その上で、当該賃貸借契約が終了したときは、賃貸人たる地位が旧所有者から新所有者またはその承継人に当然に移転するものとされました(2項)。

    4.さらに
    敷金返還債務及び費用償還債務の移転
    敷金返還債務(622条の2第1項)及び費用償還債務(608条)は、当然に新所有者に移転することが規定されました(4項)

次に

民法第605条の3
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する

つまり
新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、賃借人の承諾を必要とせず、旧所有者と新所有者間の契約をもってこれをなすことができる」
という判例法理(最高裁昭和46年4月23日第二小法廷判決)が明文化されました。
さらに

民法第605条の4
不動産の賃借人は、第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
 

改正前においても、判例(最高裁昭和28年12月18日第二小法廷判決)は、二重賃貸借が行われた事案において、
「第三者に対抗できる賃借権を有する者は爾後その土地につき賃借権を取得しこれにより地上に建物を建てて土地を使用する第三者に対し直接にその建物の収去、土地の明渡を請求することができる」
と判示していました。
また、不法占有が行われている事案において、判例(最高裁昭和30年4月5日第三小法廷判決)は、「賃借権に基いて第三者に対し建物の収去土地の明渡を請求し得る」と判示していました。
そこで、これらの判例法理を踏まえ、賃借権それ自体に基づく妨害排除請求権や返還請求権が明文化されました。

なお、所有権に基づく物権的請求権のうち妨害排除請求権と返還請求権との関係については、相手方の占有によって所有権が侵害されている場合には返還請求権、相手方の占有以外の方法によって所有権が侵害されている場合には妨害排除請求権が発生すると一般に説明されているところ、本条の賃借権に基づく請求も、この概念整理に従って規定されました。