耐震基準 旧基準と新基準

公開日 2021年04月03日

耐震基準には、「旧基準」と「新基準」があり、それぞれ求められる条件や目的、そして実際に被災したときの被害状況にも大きな差があります。
耐震基準の変化は、大地震が起きた後にそれを教訓として厳しくなってきた歴史でもあります。

今回はまず旧基準と新基準の違いについて調べてみました。

旧耐震基準
旧耐震基準では"震度5程度の地震でも倒壊しないこと"という基準があります。
倒壊しなければいいのですから、"ヒビが入る"や"住めなくなる"かは問題ではないのです。倒壊しないことにより人命が守られればそれでOK。

では震度6,7の地震はどうなのだ?という話になるのですが、震度6,7は考慮されていません。
この当時はそのように大きな地震が来るとは誰も思っていなかったのでしょう。

新耐震基準
1981年6月以降に建築確認申請がおりた新耐震基準では次のように基準が見直されました。
震度5程度の地震では"倒壊しないこと"から"中規模の地震動でほとんど損傷しない"となりました。
国土交通省のホームページでは"建築物の存続期間中に数度遭遇すべき稀に発生する地震動に対してほとんど損傷がしょうずるおそれのないこと。"と書いてあります。

では大規模な地震ではどうでしょう。
震度6,7クラスの地震がきたときの基準も考慮されています。

"倒壊しないこと"

このクラスの地震で倒壊しない強度が求められています。
国土交通省のホームページでは"建築物の存在期間中に1度は遭遇することを考慮すべき極めて稀に発生する地震動に対して倒壊・崩壊するおそれのないこと。"と書かれています。

たまに起こる地震でも建物が壊れないようにしつつ、極稀に起こる大地震については、損傷しても構わないので建物内の命は最優先で守るといった、二段階の設計となってるのです。

新基準と旧基準の建物では安全性にどれくらい違いがあるの?

最近の大地震では、旧基準と新基準で被害状況に大きな差がありました。
以下のデータは、建物の被害状況を「軽微・無被害」「中・小破」「大破」の3つに区分して、その割合を算出したものです。

 

旧基準で建てられた建物の30%が「大破」したのに対し、新基準で建てられた建物では10%以下に留まっています。

一方「軽微・無被害」にとどまった建物の割合にも大きな差があり、旧基準では35%程度、新基準では70%以上となっています。

特に旧基準の建物に被害が集中し、7割程度の建物が「中・小破」以上の重大なダメージを被りました。
新基準による建物がもっと多く普及していれば、より多くの人命が助かっていたかもしれません。

新基準とは人命最優先の設計

新基準の建物は、「大規模地震にあっても建物が壊れない」というわけではありません。
その目的は人命を救うことにあり、言い換えれば「逃げるまでの時間を確保できる建物」ともいえるのです。

建物の耐震基準は、過去の地震被害からの教訓を元として成り立っています。
日本は地震大国でありますから、今後もたびたび大きな地震被害に見舞われるかもしれません。
しかしそのたびに学びを得て、建物も進化を続けていくでしょう。

「旧基準」や「新基準」といった今ある規定だけでなく、今後も行われていくであろう耐震基準の変化にも注目していきましょう。