公開日 2021年11月17日
ひんにちは
中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営危機がにわかに注目を浴びています。
2021年9月20日、同社のデフォルト(債務不履行)懸念を受け株価が急落。
10月12日には、ここ3週間で3度目となる社債の利払い遅延の報道もあったようです。
とりあえず本日11月17日時点では債務不履行危機は避けられたという報道ですが
中国恒大集団は、1996年に広東省広州市で、董事局主席(会長)の許家印氏が創業した不動産開発企業。
2000年代の中国経済の拡大とともに、黎明(れいめい)期にあった不動産市場は急拡大。そのブームに乗って恒大も急成長を遂げてきました。不動産開発には多額の資金が必要な上に、経営の多角化を進めるために、さらなる借り入れや外債を中心とした債券発行を行った結果、同社の負債はみるみる増加していきました。
2020年8月、恒大集団が広東省政府に提出した内部報告書が流出しそこに記されていたのが、国内外の金融機関が関わる同社の有利子負債の実態でした。
具体的には、2020年6月30日における有利子負債総額は8355億元(14.2兆円)で、その内、国内ノンバンク向けが3676億元(44.0%)、国内銀行向けが2159億元(25.8%)、海外債券1852億元(22.2%)、国内債券496億元(5.9%)
時を同じくして、中国政府が規制強化へとかじを切ります。
中国政府は2020年8月、デベロッパーに対し資金調達の制限に関する指導を行い。そこで示されたのが、「三条紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる基準でした。
- (物件前売りで得る資金を除く)資産負債比率が70%以下
- 自己資本に対する負債比率が100%以下
- 短期債務を上回る現金保有(現金÷短期債務>1)
この3つの基準の達成数に応じて、デベロッパーを「緑(3つ達成)」「黄(2つ達成)」「オレンジ(1つ達成)」「赤(全て未達)」の4グループに区分し、年間の有利子負債の増加額を、「緑」は15%以内、「黄」は10%以内、「オレンジ」は5%以内に抑え、「赤」は増加を認めないという内容。
この基準を一つも達成できていなかった恒大は「赤」に分類され、資金調達が困難となります。
この規制強化の理由として一つの興味ある見解があります。
“お金持ち叩き”で民衆を味方に付けたい習近平
まず、そもそもこの中国の恒大集団という不動産会社ですけれども、これが倒産の危機に瀕しているのは、必ずしも自発的に不動産事業が悪化したとか、経営が無理をしたからということではありません。
これは「官製倒産」で、中国の政府が不動産業界に対する引き締めを強めた結果、銀行が不動産に融資を行うことが難しくなってしまって、この恒大集団をはじめとする不動産企業の資金繰りが急に苦しくなってしまったというところがあります。
したがって、これは中国政府によるある種の見せしめ的な部分があるわけです。
倒産することによって見えてくるのは中国政府、とくに習近平国家主席の意図になります。
この習近平国家主席はいま独裁体制を非常に強めていまして、その独裁体制を継続させるためには、民衆の支持を確実に掌握しておくということが不可欠になるわけです。
そのためにやっているのが、この恒大集団前会長のような金持ちで、派手な金遣いをやっていた者を習近平は目の敵にして、彼らを懲らしめることによって、民衆の批判をそちらに向けようとしているわけです。
また同時にいま中国は不動産バブルとなっていますから、それによって家を買えない人たちがどんどん出てきているわけです。
その状況を打破して不動産価格を下げることによって、民衆の支持を得るのと同時に、不動産バブルだということも確かですから、バブルの崩壊による経済の悪化、かつての日本の不動産バブル崩壊のような状況になってしまうのを事前に防ごうとしている節があります。
あくまでも一つの見解ですがこれは中国の共同富裕という発想と大きな関係がありそうです
共同富裕の支持者は、企業は従業員とある程度の利益を共有する必要があると言う。立派な考えだそうですが、
中国の政策立案当局は債務依存の企業文化にも注意を払うべきだ。中国恒大は顧客や従業員、供給業者を含めあらゆる相手から借金をしていることから。共同富裕がすぐに「共同貧困」に転じる可能性もありそうです。
最後に
リーマン・ショックのようにはならない
これが一部ではリーマン・ショックのようになるのではないかと言われているのですが、リーマン・ショックは世界のあらゆる金融機関が、アメリカのサブプライムローンと言われる信用力の低い人のために組成した住宅ローンを、証券化商品としてばら撒かれた事が発端になっています。
今回の恒大集団の負債総額は10兆円と言われているのですが、その大部分は中国国内の富豪ですとか、個人投資家によって払われているものなので、世界全体のリスクは限定的、しかも中国国内に関しても官製倒産というところなので、そのリスクは当然見積もったうえで、大丈夫だろうと計算をしてやっていると思います。
したがって、リーマン・ショックのようになるリスクは限定的だという風に考えます