公開日 2022年02月27日
こんにちは
先日 不動産のセミナーを受講しました。
多くの注目の事例について説明を受けましたが
その最後のケースが件名の建物明渡しの強制執行と自力救済でした
民法における原則の一つに、自力救済の禁止の原則という原則があります。
自力救済を行う行為は、自己救済ともいいます。この自力救済は、中核的には、民法において議論される原則ですが、刑法(犯罪被害を回復するなどの刑事的な場面)でも登場します。
刑法においては主として「自救行為」という用語が使用されることが多いかもしれません。
それらの行為をしてしまった場合には、不法行為(民法709条)に該当し、損害賠償責任を追及されることがあります。
さらに、賃借人を訪問し、明け渡しを迫るような行為は、刑法上の不退去罪や強要罪に該当し、刑事上の責任を問われる可能性があります。
いずれも、実刑の可能性がある犯罪行為であり、刑事責任を問われる可能性があります。
ただし、自力救済禁止には例外もあります。
以上、自力救済の禁止の原則について見てきました。社会秩序維持というメリットはあるものの、弊害もあります。
そして、上記のような弊害を緩和するには、どうしても一定の例外を許容することが必要です。
自力救済について例外を全く認めない、という解釈は現行の司法制度の下では成り立ちません。
そこで、次に、原則に対する「例外」について見ていきます。
自力救済が否定されたケース 東京地方裁判所平成16年6月2日判決
東京地裁平成16年6月2日判決は、建物明け渡しに関し、違法な自力救済にあたると判断した判決です。
このケースは、事務所兼倉庫を賃借していたオーナーが、賃料不払による契約の解除後、たまたま賃借不動産に居合わせた借主の従業員立会の下で、賃借不動産のカギを取り換えたというケースです。
借主の代表者は鍵の交換に承諾も容認もしていなかったと認定されています。
このケースにおいて、東京地方裁判所は、鍵の取り換えが違法な自力救済に当たると判断しています。ここでは自力救済禁止の原則の本旨が貫かれています。
自力救済が認められたケース 昭和63年2月4日横浜地方裁判所判決
他方、昭和63年2月4日横浜地方裁判所判決は、自力救済を肯定した事案です。
このケースは、をある自動車の所有者が、車を移動するように再三にわたって督促されたにもかかわらず、人の不動産の前に車を3ヶ月間置きっぱなしにしたというケースです。
住人が車を処分したのに対し、車の所有者が違法である旨主張すべく損害賠償請求訴訟を提起しました。
横浜地方裁判所は、当該ケースにおいて、上記最高裁にいう「やむを得ない特別の事情」があるとして、損害賠償請求を認めませんでした。
この裁判例は、自力救済が違法とされなかった極めてまれなケースの一つとして、有名になったケースです。
まとめ
セミナーを受講し考えたことは
自力救済は原則否定というのは、実力行使できる者のみが権利を実現できる社会を防止して。これでは社会秩序が維持することにあるようです。逆に言えば
公平な立場にある機関に立ち会ってもらうなどし社会の秩序維持に資する場合には自力救済禁止の枠には入らないということになりそうです。
権利者の独自の力ではなく 警察や裁判所の手続きののっとって権利を実現していくことが肝要と思われます。