公開日 2023年04月01日
こんにちは
最近の企業買収ではアーンアウト(Earn Out)という方法が良く使われるようです。
アーンアウトとは?
アーンアウト(Earn out)とは、M&A実行後、条件に応じて追加代金を支払う義務のことを指します。具体的にはM&A実行後の一定期間内に、買収対象となっている売り手企業・事業が定められた目標を達成した場合、あらかじめ両者が合意した計算方法に基づき対価が追加で支払われます。一般的にM&Aの買収対価は一括で支払われますが、買収対価の一部を買収後の目標達成と連動させることで、リスクを適切に配分し、買収対価における両社の認識の違いを埋めることを目的に用いられます。なお、こうした規定は「アーンアウト条項」と呼ばれ、以下のような財務指標が条件として設定されます。
条件となる財務指標
純利益、売上高、営業利益、EBITDA、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローなど
国内では精通した専門家が少なく、アーンアウトを用いた事例は海外と比べると多く見られませんが、米国やクロスボーダーのM&A取引ではよく利用されています。
アーンアウトをM&Aで利用するメリット
買い手側、売り手側、それぞれの視点で、メリットをまとめて見ていきます。
買い手のメリット①:潜在的なリスクを回避できる
一括で支払った後に、対象企業のリスクが顕在化することを避けるために、買収対価の支払いをあらかじめ定めた財務指標の達成度合いに応じて実行する条項があることで、すべての買収資金を支払う前に潜在的なリスクを回避することができます。
買い手のメリット②:資金流出を分散できる
一度に多額の資金を支払う必要がななくなるため、資金の流出(キャッシュ・アウト)を分散化できるメリットがあります。
資金調達の面を考えても、金融機関などから一度に多くの資金を調達するのが大変な場合には、複数の金融機関にタイミングを分散して融資を申し込めるため、資金調達できる可能性が高まるでしょう。あるいは、分割支払いであれば外部から資金調達する必要がなくなるかもしれません。また、支払い回数が多い方が1回当たりの資金負担は単純に軽くなることが考えられます。多額の現金が社外へ流出すると資金繰りなどに大きな影響を与えるため、資金繰りを補正するための手間や時間もかかると考えられます。
売り手のメリット①:より多くの資金を獲得できる可能性が生まれる
目標達成度合いによっては、一括で買収資金を受け取る場合に比べてより多くの買収資金を受け取れる可能性が生まれます。アーンアウト条項は売り手側企業にとっても自社の成長を図るために利用できる買収条件のオプション条項であると言えます。
売り手のメリット②:売り手企業のモチベーションが維持される
一定の成果・目標を達成することは、すなわち自社の将来性も高く評価してくれる証左になるため、売り手側の従業員のやる気が高まることが期待できます。売り手側企業のモチベーションが維持されるポイントは買い手側企業のみならず、売り手側自身にとってもメリットがあると言えます。
アーンアウトを活用する際のデメリット
続いてデメリット、注意点について見ていきましょう。
買い手のデメリット①:買収金額が高くなる可能性がある
売り手側企業が業績を大幅に向上させた場合には、当初の想定よりも高い買収金額を支払う必要があります。この点は買収価格が高くなったことをデメリットとして捉えるのか、それだけ価値がアップした会社・事業を手に入れられたことをメリットとして認識するのか、は難しいところですが、当然ながらあらかじめ買収資金が想定より増加する可能性を認識しておく必要があります。
買い手のデメリット②支払いが難しくなる可能性もある
アーンアウト条項を提供することで、M&Aを実行するタイミングと、買収資金の支払いのタイミングにずれが生じます。そのため、その間に何らかの事情で買い手側が買収資金を捻出できなくなるリスクも考えられます。
しかし、基本的にはどのような状況であれ、買収代金を支払う必要があるため、こうしたリスクに備えて金融機関からコミットメントラインを設定してもらったり、緊急融資枠を申し込める環境を整えておいたりすることも重要です。
※コミットメントライン:顧客と銀行が前もって契約した期間・融資枠の範囲内において、顧客の請求にもとづいて銀行が融資を実行することをコミット(約束)する契約
売り手のデメリット①一括でまとまった資金を獲得できない
売り手側企業はあらかじめ定められた財務指標などの目標値を達成しないと、買収資金を手に入れられません。アーンアウト条項がないM&A契約であれば、一括してまとまった資金を手に入れられますので、数回に分割されて買収資金が支払われる点は売り手側企業にとってのアーンアウトのデメリットと言えます。
売り手のデメリット②業績の達成度合いによって受け取る金額が異なってくる
売り手側企業は、業績の達成度合いに応じて受け取れる譲渡金額が変わります。もし設定した目標値に届かない場合は、当然ながら受け取る金額は少なくなります。契約内容によっては、極端に設定目標を大きく下回ってしまった場合には、M&Aの話自体が破談になってしまう可能性もあります。したがって、売り手側企業としては達成が非現実的な目標の設定には簡単に同意しないことが重要です。どうすれば設定目標をクリアできるのかという目標を定めるのがポイントです。そしてそれを達成するための具体的な手段の目論見がついているかどうか、という判断が極めて大切です。
両者に共通するデメリット 交渉に時間がかかる
買い手側企業にとっても売り手側企業にとっても、M&Aの契約にアーンアウト条項を入れるためにはお互いに内容を精査・検討するため、一括で売買代金を決済する場合に比べれば多くの時間や手間がかかります。
アーンアウト条項は双方にとって重要な契約内容なので、慎重に検討・交渉する必要があります。手間や時間がかかることは仕方ないと思われますが、この点はアーンアウト条項の利用における大きなデメリットです。
まとめ
アーンアウトは企業買収の位置方法ですが
1千万以上の金銭の流通がふる、不動産取引にも応用できる余地はないとは言えません。
交渉に時間がかかり、また実際に居住した場合の不具合なの度合いによって受け取る金額が異なってくるリスクはあります。
しかし買主側の潜在的なリスクを回避でき、さらに売り手としてもより多くの利益が生まれる可能性があります。
今後不動産取引にも利用があるでしょうか