公開日 2023年10月07日
消費税の仕入税額控除とは?仕組みや要件、インボイス制度での変更点をわかりやすく解説
消費税の「仕入税額控除」とは、消費税の課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を控除することです。消費税の課税事業者は、課税売上と課税仕入とで算出した消費税の差額を納税します。
仕入税額控除の仕組み、計算方法、要件やインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入後の変更点など解説します。
POINT
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仕入税額控除とは、消費税納税額の計算にあたり、事業者が外部に支払った消費税を納税額から控除すること
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仕入税額控除の計算においては、仕入税額控除の対象にならない費用を把握しておくことが重要
消費税の仕入税額控除とは?
消費者にとって消費税とは、購入額の10%(軽減税率対象の場合8%)を購入先に支払う税金のことです。一方で購入先(=事業者)から見れば、受け取った消費税はお客様(消費者)の代わりに納税するために預かっているお金ということになります。
この消費者から預かった消費税は、預かった税額をそのまま納付するのではありません。なぜなら、事業をしていく上ではさまざまな費用がかかり、その都度外部の事業者に対して消費税を支払っています。
そのため、消費税の納税額は、原則として預かった消費税から外部に支払った消費税を引いた差額を納税することで二重課税を防ぐような仕組みになっています。このように、消費税納税額の計算にあたり、外部に支払った消費税を引くことを「仕入税額控除」といいます。
適用要件は「課税仕入れ」であること
仕入税額控除とは消費税の納税額を計算する際に、外部に支払った消費税を納税額から差し引く仕組みのことです。つまり仕入税額控除を行うためには、外部に支払った金額に消費税がかかっている取引である必要があります。
「外部」という言葉を使っているのは、給与や賞与、退職金など会社の役員や従業員に対して支払う費用は、消費税の対象外だからです。人件費をいくら支払っても、消費税の納税額には影響を及ぼしません。また、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料の支払いについても、消費税が課税されていないため、仕入税額控除の対象外となります。
人件費のほかに、消費税が課税されない支払いとして以下のようなものがあります。
1.借入金の利息や、法人契約の損害保険料や生命保険料
2.社宅など居住用で契約した不動産の家賃
3.海外送金時の金融機関に支払う手数料
4.納税証明書など各種証明書を取得するために、国や地方自治体に支払う手数料
5.商品券、プリペイドカードなどの購入(他者への贈答用などではなく、自社で使用するために購入した場合には仕入税額控除の対象)
6.印紙売り場で購入する印紙(金券ショップで購入すれば仕入税額控除の対象)
7.固定資産税、自動車税などの各種税金
8.寄付
9.損害賠償金
10.取引先や従業員への慶弔費
上記を除き、多くの費用は消費税が課税されます。「仕入」という言葉に引っ張られて、材料や販売商品などの仕入れだけが仕入税額控除の対象だと誤解しないようにしましょう。
オフィスや倉庫などの家賃、チラシやホームページなどの広告宣伝費、文房具やその他備品の購入費、水道光熱費や、外部の専門家や外注先に仕事を依頼した場合の費用、取引先への移動交通費など、幅広い費用が仕入税額控除の対象となります。また、人件費と混同しやすいですが、人材派遣料についても外注費と同じ扱いで仕入税額控除の対象です。
仕入税額控除の計算においては、どの費用に消費税がかかるのかよりも、例外的に消費税がかからない費用をしっかりと把握しておくことが重要です。そうすれば、対象外のもの以外は仕入税額控除の対象であると分かり、計算もしやすくなります。
消費税の仕入税額控除の計算方法
消費税納税額の計算においては、外部に支払った消費税の合計額を用いて仕入税額控除の金額を計算するのが原則です。