公開日 2023年10月08日
消費税の仕入税額控除を受ける要件
ポイント
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仕入税額控除を受けるには、決められた事項が記載・記録された帳簿と請求書等の保存が必要
消費税の仕入税額控除を受ける要件は、2つあります。ひとつは「帳簿の保存」、そしてもうひとつが「請求書等の保存」です。
まず帳簿の保存は、以下の情報が記録されていることが必要です。
- 帳簿の保存
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1.取引の相手(仕入先や購入した店舗など)の名称(個人の場合は氏名)
2.購入した年月日
3.取引の内容
4.税率ごとに区分した取引の金額
帳簿とは、仕訳帳など取引を記録した書類やデータのことを指します。会計ソフトを使っている場合は、上記の情報が仕訳で分かるようになっていれば問題ありません。特に3の取引の内容は「摘要」欄をうまく活用するなどして記録しておきましょう。
請求書等の保存は、以下の情報が記載されていることが必要です。
- 請求書等の保存
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1.取引の相手(仕入先や購入した店舗など)の名称(個人の場合は氏名)
2.購入した年月日
3.取引の内容
4.税率ごとに区分した取引の金額
5.請求書等の交付を受ける者の氏名又は名称(自社)
請求書等には、請求書のほか領収書・納品書・自社で作成する支払通知書(取引の相手に内容の確認を受けたもの)や、内容確認メールや注文確定メールなどが幅広く該当します。
上記の記載事項が記載されていれば、書類の名称を問わず「請求書等」に該当すると考えてよいでしょう。また、軽減税率の対象となる項目があれば、どの項目が軽減税率の対象となるのかも分かるようにしておく必要があります。
帳簿も請求書等も、保存期間はその事業年度終了の2か月後(消費税の申告期限)から7年間です。
なお、税込で3万円未満の支払いであれば、請求書等を保存せずに帳簿の保存だけでよいことになっていますが、あくまでこれは仕入税額控除の話です。経理処理上は3万円未満でも内容を確認して勘定科目を決めるなどが必要なので、金額にかかわらず可能な限り請求書等は受領するようにしましょう。
そして、2023年10月1日に導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)によって、帳簿や請求書等の記載は大きく変わります。
インボイス(適格請求書)とは、税務署が「適格」と認めたお墨付きの請求書です。インボイス制度の導入により、以下の2点が請求書等の記載項目に加わります。これを「適格請求書」といいます。
1.税区分ごとの消費税額と適用税率(図の⑧)1.税区分ごとの消費税額と適用税率(図の⑧)
2.登録番号(図の⑨)
登録番号とは、インボイス制度の導入にあたって税務署に届け出をすることで適格請求書発行事業者として、登録され附番される事業者ごとのコードです。インボイス制度の導入後は、この登録番号が記載された適格請求書発行事業者が発行する請求書等でないと仕入税額控除の対象にできなくなります。
適格請求書発行事業者には、消費税の課税事業者しかなれません。よって、登録番号を取得した事業者は、売上規模にかかわらず課税事業者になります。インボイス制度がスタートすると、結果的に課税事業者への支払いでないと仕入税額控除の対象にできません。消費税納税額の計算方法がこれまでと大きく変わる改正となります。
ただし、インボイス制度導入後も2029年9月30日までは、免税事業者へ支払った消費税のうち一定割合を仕入税額控除の対象にできる経過措置があります。
インボイス制度が導入されることで、帳簿記載などの事務作業は煩雑になります。会計ソフトを使い、新しい制度に対応する準備をしっかりと進めておきましょう。今できることは、課税事業者になったなら、原則課税と簡易課税のどちらが自分にとって得なのかということをシミュレーションすることや、おおよその納税額を計算してみることなどです。
また、これからもインボイス制度の導入までに経過措置や特例の導入があるかもしれません。インボイス制度が今後どうなっていくのか動向を見守るといいでしょう。