公開日 2024年01月27日
新NISAに潜む5つの注意点
2024年(令和5年)1月から新NISAが始まります。
投資可能な期間が無期限になったり、
非課税投資枠が大幅に増えたりといったメリットにばかり話題が集中しますが、
本当にメリットばかりなのでしょうか。
どんな素晴らしいツールも正しく理解し、使わなくては罠に引っ掛かってしまいます。
今回は、新NISAでの資産運用が失敗に終わることのないよう、5つの注意点を解説します。
新NISAの注意点1:年間投資枠が増えたけど、リスクに見合わない投資はNG
新NISAは旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)と比べ、年間投資枠が広がりました。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円。両方を合わせると年間360万円まで投資ができます。さらに、非課税保有限度額は最大1800万円で、成長投資枠の上限は1200万円までになります。つみたて投資枠だけで1800万円投資することも可能です。
もし、年間360万円の投資を5年間続ければ1800万円になりますが、投資可能期間は無期限です。必ずしも1年間で最大360万円を使い切る必要はありません。たとえば、毎月10万円、1年間で120万円の投資を15年間続け、最大投資可能枠の1800万円を使ってもよいわけです。
余裕があれば年間360万円の投資をしても大丈夫かもしれませんが、無理をしてまで、360万円を1年間で投資に回す必要はありません。生活防衛資金(目安は約6か月分の生活費)や数年以内に使う予定があるお金には手を付けず、あくまでも余剰資金を使って投資を続けるようにしましょう。
新NISAの注意点2:非課税保有限度額が復活するようになるけど、短期売買はNG
新NISAの非課税保有限度額は、商品を売却すると復活します。
たとえば、つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円、合計360万円を5年継続して投資すると、新NISAの非課税保有限度額の1800万円に達します。その後、その内の300万円を売却した場合、翌年に300万円分の非課税保有限度額が復活し、新たな非課税投資をすることができます。
これまでのNISAでは、年間の非課税枠は売却しても復活しませんでした。ですから、新NISAで非課税保有限度額が復活するようになったことはメリットです。
しかし、そのメリットばかりに執着し、少し利益が出ただけで売却してしまうと、長期間の運用で得られるはずのリターンを逃してしまうかもしれません。
新NISAの非課税保有限度額が復活するのは売却の翌年なので、過度な短期売買を繰り返すことはできません。しかし、それでも数年程度の期間で売却してしまうようでは、数十年かけて投資した場合に得られる複利効果を得られなくなってしまいます。
投資の基本は長期・積立・分散です。じっくり投資に取り組んで、大きなリターンを目指しましょう。
新NISAの注意点3:2024年以降いつでもできるけど、早く始めないのはNG
新NISAは2024年から始まり、以後はいつでもスタートできます。ですから「2024年から新NISAを始めよう」「少し様子を見てから始めよう」などとと思う方もいるでしょう。しかし、旧NISAと新NISAの非課税投資枠は別枠で取り扱いできます。つまり、もし、2023年のうちにつみたてNISAを始めれば最大40万円、一般NISAを始めたのであれば最大120万円を、新NISAの1800万円とは別に運用することができます。その分非課税で投資できる金額が増やせるというわけです。
また、少しでも早くから投資を行うことで、投資期間そのものが長くなります。その分、複利効果を長く得ることができますし、投資に対する知識・経験を積み上げることができます。ですから、2023年からNISAを始めて、長く続けることを考えましょう。
新NISAの注意点4:iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用しないのはNG
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用する制度です。新NISAも同じ投資ですが、始めた後は、必要に応じてお金を自由に引き出せます。しかし、iDeCoは、運用の成果を原則60歳以降に一時金または年金で受け取るという制度なので、開始したあとは、60歳までお金が引き出せません。そのため「老後資金の準備は、iDeCoを利用せず新NISAだけにしておこう」と考える人がいるかもしれません。
そうはいっても、iDeCoにあって、新NISAにないメリットを忘れてはいけません。
iDeCoに加入すれば、毎月の掛金がすべて控除の対象になり、所得税や住民税を安くすることができます。
たとえば、32歳の会社員(年収400万円)が毎月2万円ずつ、年間24万円をiDeCoで積み立てたとします。この場合、所得税1万2000円、住民税2万4000円、合計で毎年3万6000円安くできます。仮に65歳まで、33年間この条件でiDeCoを利用したとすると、「3万6000円×33年=118万8000円」節税できます。
新NISAはiDeCoのように、掛金が所得控除になることはありません。もし、投資額が多くできるなら、新NISAとiDeCoと併用するようにしましょう。
新NISAの注意点5:損益通算は変わらずできないので注意
「損益通算」とは、投資で損失を確定した場合、別の投資で出た利益と相殺する計算方法のことです。
たとえば、2つの特定口座で株式投資をして、特定口座Aで100万円の損失、特定口座Bで50万円の利益が出たとします。このとき、何もしなければ特定口座Bの50万円の利益に対して20.315%の税金がかかってしまいますが、確定申告をして損益通算すれば、この年の損失が「50万円−100万円=▲50万円」となり、税金はかかりません。
さらに、損失となった▲50万円は、最長3年間繰り越して翌年以降の利益から控除できます。これを「繰越控除」といいます。
損益通算や繰越控除ができれば、万が一投資で損失を出しても、他の利益と相殺できるので、その分の税金が抑えられます。しかし、NISA口座では、損益通算・繰越控除を使うことはできません。なぜなら、NISA口座は、利益が出ても非課税となるので、損失が出ても通算する必要がないからです。旧NISAでも損益通算・繰越控除はできませんが、新NISAでも損益通算・繰越控除はできないことを押さえておきましょう。