公開日 2024年12月29日
こんにちは
資本主義と倫理 一見かみ合わない概念をを結ぶ
おもしろしきじをみつけ見つけました
「善」がもたらす利益
新しい年へ向けて、私たちは資本主義といかに向き合うべきか。気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエル氏に聞いた。
――過剰な経済競争が様々な問題を生み出している。
「まず世界が直面する『入れ子構造の危機』という考え方を紹介したい。気候変動を端緒に資源の獲得競争が生まれ、各地で経済的不平等や社会の分断、ウクライナ戦争などの国家間の対立が起きている。異なる種類の危機が入れ子構造のように複雑に絡み合っている。簡単に原因の特定や解決ができないのが現代という時代だ」
「だが資本主義が諸悪の根源という指摘は誤りだ。資本主義こそ封建主義を否定し、個人が経済的手段を用いて自由を獲得する契機となった。その自由は民主主義さえもたらした。格差や分断といった危機は、国家が成長する過程で試行錯誤を重ねてきた産業化の負の側面にすぎない」
――一方であなたは著書「倫理資本主義の時代」(ハヤカワ新書)で、資本主義を改善すべきだと主張した。
「商業的な利益と合わせて、他者と共有できる普遍的な善を追求すべきだと考える。現代の資本主義にも倫理は不可欠だ。ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲンは排ガス不正が発覚して業績低迷が続き、米フェイスブック(現メタ)は個人情報の流出でユーザーの信頼を失った。日本国内でも政権与党の『政治とカネ』の問題が発覚して不安定な情勢となっている。不道徳な行いは社会に甚大な危機をもたらしかねない」
「人々が市場で他者を思いやり倫理的に活動すれば、市場は様々な問題を解決する場になり得る。倫理と資本主義を結びつけられれば、金銭のみならず、危機の解決という人類共通の利益を手にできるだろう」
――メディアの倫理はどうあるべきか。先の米大統領選や国内の選挙では、メディアがポピュリズム(大衆迎合主義)や分断を助長したとの指摘もある。
「現代が直面する問題の一つが大衆の二極化だ。英国の哲学者カール・ポパーは民主主義が抱える『寛容のパラドックス』として、寛容な社会を維持するには、不寛容に対して不寛容であらねばならないと指摘した。インターネットやSNSは自由な言論空間を作ろうとしたがために、規制が後手に回り、悪質なユーザーがデマを垂れ流して分断を招いている。これは市場におけるメディアの失敗例だ」
「対抗策としてリベラルな言論の場となる新しいメディアを創造してはどうか。市場から悪質なユーザーやメディアを追放するのだ。政治より経済が大きな力を持つ現代、その方がはるかに有効だろう」
――人工知能(AI)時代の新たな価値を模索する京都哲学研究所のシニア・グローバル・アドバイザーに今夏就任した。日本が国際社会の危機に貢献できることはあるか。
「日本は中国文化を受容しながら築いた独自の文化と西洋文化を融合させ近代化に成功した珍しい国だ。国際情勢における東西対立の火種は冷戦後もくすぶっている。多様な価値が入り乱れる現代の危機をいかに乗り越えるか。我々は日本の経験から学ぶ必要がある」