公開日 2025年02月24日
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若者から逃げるな、日本が失う3000兆円 パナ5割知らず
信じられない結果が出た。
パナソニックを若者の半数が知らない――。2022年春、社長らが出席して開かれたパナソニックホールディングスの執行役員会。ブランド調査の資料を見た幹部は目を疑った。パナソニックの20代の認知度53%。「そんなわけがあるか」
経営の神様、松下幸之助氏が生んだ会社、「パナソニック」「ナショナル」で知られた世界最大級の家電メーカー。海外勢に押されることが目立つようになったとはいえ、日本を代表する企業・ブランドの自負がある。そのパナソニックをいまの若者はよく知らない。

調査は日本だけのもの。海外での認知度を考えると手をこまぬいているわけにはいかない。広告を増やすなどして立て直しを急いだが、数年前まで9割前後あった認知度は最新の調査でも7割台にしか戻っていない。
「若い人が使う商品が少ないのが最大の理由。街で見かける商品は自転車くらいしかない」。楠見雄規社長は語る。そして危機感をあらわにする。「このまま恐竜のように化石になって死ぬわけにはいかない」
日本企業の製品やサービスから若者離れが目立ってきた。パナソニックだけではない。
ディズニー来園者、3人に1人が中高年
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾートは23年度の来園者に占める40代以上の比率が5年前より12ポイント高くなり33%になった。3人に1人が中高年だ。調査会社によるとLINEヤフーのインターネット通販「Yahoo!ショッピング」も50歳以上の利用が5割に高まった。
政治でも若者の行動を「大人」が読み切れなくなってきた。SNSを原動力に想定外の候補者が躍進する。企業も若者を外し、中高年と富裕層に照準を絞る。正面から向き合わないうちに若者がそっぽを向きつつある。
代償は大きい。世界の20代以下の若者が買い物やネットに費やした消費額は24年、前年比3%増の18兆ドル(約3000兆円)に達したことがわかった。全体の3割を占め、世代別で最大だ。欧州の調査会社、ワールド・データ・ラボの調査で明らかになった。

新興国での人口増などに伴って20年後には2倍超の40兆ドルまで伸びる。30代と40代を合わせた消費額よりも大きい。まさに宝の山だ。しかし、日本企業はゲームなど一部を除いて若者向けのビジネスに挑もうとせず、「不戦敗」を決め込む。
新商品など主要企業の発表資料を読み解くと鮮明になる。「10代」や「高校生」などの言葉を含む若者向けの資料は食品業界で00年代半ばに10%を超えていたが、ここ数年は4%しかない。小売業も3%前後に半減した。03年から56万件の資料を蓄積する「日経プレスリリース」を解析した。
TikTokやコスメ…中国・韓国勢が隙突く
隙を中韓勢が突く。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」や電子商取引「Temu(テム)」、韓国コスメ。世界の若者の流行は両国の企業が主導する。
液晶テレビやスマートフォン、世界的な消費財企業が日本から次々に消えた。投資競争の結果だけではない。若者に挑まなくなったことも響く。移り気な若者をつかむのは確かに難しい。資産も中高年より少ない。だが若者から逃げると会社どころか産業、そして国の富さえ失うことになる。

「リゲイン」。24時間戦えますかのCMで知られる栄養ドリンクが24年春、店頭から消えた。発売から36年、主力商品からの撤退を強いられた。栄養ドリンクは「リポビタンD」など日本企業が生んだ。英ユーロモニターによれば24年の国内市場は1700億円と10年で1割減った。低迷が続く。
対照的なのがオーストリアの「レッドブル」などのエナジードリンクだ。世界市場は約11兆円と2倍になった。レッドブルは創業者が日本の製品に着想を得て起業した。日本がつくった産業を事実上、海外企業に奪われた。
勝敗を分けたのは若者だ。レッドブルはターゲットを20歳前後に定め、販促活動を大々的に展開する。栄養ドリンクは中高年中心に絞ったことで、世界ブランドへの飛躍はおろか、復活の兆しすら見つけられない。
持続的な成長もできなくなる。20年後、20代以下の世界の若者が40代以下になったとき、収入の増加で消費額は3倍の56兆ドルまで膨らむ。中高年の需要を取り込もうにもブランドが親しまれていなければ関心を引きにくい。人手不足も世界で深刻化する。人材の争奪戦でも不利になる。
早稲田大学の清水洋教授は「中高年向けの既存ビジネスは冒険する必要が少ない。若者に挑むことがイノベーション力も高める」と指摘する。
国は老いる。企業も老いるのか。若者から逃げるな。未来へ種をまき続けよ。