【物件売却なしでも返済減免の方針】物件売却なしでも返済減免の方針

公開日 2025年07月07日

 

長引くスルガ不正融資問題、新和解案にもオーナーらは「違和感」…平行線たどる議論の行方は?

物件売却なしでも返済減免の方針、新たな改善策の内容

 

スルガ銀行東京支店(PHOTO:PIXTA)

スルガ銀行(静岡県沼津市)は6月、投資用アパート・マンションをめぐる不正融資問題について、被害を訴えている債務者に対し早期解決をめざした新たな改善策を発表した。

従来は物件を任意売却して元本返済に充てることを前提に、利息や損害金の一部免除を行う基本方針だった。今回の発表によると、物件を所有し家賃収入を得ている状態でも、利息や損害金の一部免除に応じる形へと条件を緩和する方針となる。

また、物件収支が赤字で返済が困難な債務者の金利引き下げについて、従来は1.4%だった下限を当面1.0%に引き下げる施策も提示された。

早期解決をめざし新たな改善策へ

これまでスルガ銀行を巡っては、融資の過程で書類の改ざんや偽造などの不正が行われていたことが明らかになっている。

このうち、女性用シェアハウス「かぼちゃの馬車」に対する融資に関しては、同行側が解決金をオーナーに支払い、残った債権を入札で決めた第三者に譲渡、オーナーは物件を手放すことと引き換えに債務を解消する「代物弁済」が行われた。

一方、通常のアパートやマンションに対する不正融資に関しては、一部のオーナーは同行にシェアハウスと同様の「一律での解決」を求めていた。

これに対し、同行は「個々の案件について多様な事情があることから、一律での解決は困難」として、個別に元本一部カットやレートダウンといった対応をとってきた。

さらに、対象者には「任意売却後、延滞中の利息及び損害金の一部免除」や「任意売却による売却代金等充当後の残債務の返済相談」といった案も提示。

ただ、一部オーナーとは意見が折り合わず、議論が長期化していた。そこで早期解決を図るべく、今回、要件を緩和した新たな策を提示した形だ。

 

被害者同盟はどう受け止める?

スルガ銀行に一律対応を求めるオーナーらが結成した、「スルガ銀行不正融資被害者同盟(SI被害弁護団)」の設立に携わった冨谷皐介氏は今回の発表内容に対し、「違和感を覚えました」と語る。

「一律解決や包括的解決を求めるSI被害弁護団の対応が、まるで解決を妨げているかのような印象を与える文章です。そもそも組織的に行われた不正であれば、包括的に解決する必要があるのではないでしょうか」

スルガ銀行の「個別解決の必要がある」という意見については、「たとえば不動産業者Aに騙された人、銀行員Bに騙された人…と類型化できるはずだと訴えていますが、認識に大きな隔たりがあるように感じます。長期化が弁護団のせいだという書き方は納得しかねるところです」。

また「早期解決のために当社から強く働きかける姿勢や提案が十分ではなかった」という記述については、スルガ銀行が返済を停止しているオーナーに督促を行っていることに触れ、「この督促をもっと早く行えば良かった、と言っているように読み取れる」と語る。

「返済不可能な状況に追い込まれた被害者に、『黒字である』というスルガ銀行側による一面的な試算を根拠に、無理な督促が行われていると感じます。机上の空論で勘定して督促をかける行為は、まるで被害者が群れる前に早く督促をかけて一人ずつ抑え込めばよかった、という主張にも見えてしまいかねません」

さらに、債務者の金利引き下げの下限を当面1.0%に下げるという改善策にも疑問を呈する。

「上限ならまだ分かりますが…。被害者に対して、謝罪には触れずに『支援』という形式で、調停の取り下げを前提とする構図にも違和感があります。しかも、将来的には再び2%、3%と引き上げていく可能性を示唆しているように感じられます」

今回の発表を受け止め、「被害者が声を上げないと問題は解決できません」と冨谷氏。

「迅速に解決してレピュテーションリスクをクリアにした方が、スルガ銀行にとっても早く再建に向けて歩き出せるのではと考えます。善意の契約者の方々を救済するために、当方弁護団からの提案に真摯に向き合っていただけることを心より願っております」

スルガ銀行の見解は

今回の改善策を提案した背景について、スルガ銀行に回答を求めたところ、「借入金返済に苦しむアパマン問題の対象債務者さまのご負担軽減が喫緊の課題であり、一刻も早く問題解決の道筋をつけることが不可欠であると考えている」としたうえで、以下のように回答した。

 


■従来の改善策から要件を緩和した理由について

今回拡充した個別解決施策は、アパマン問題の解決を加速化するためにご用意したものであり、個別解決への道筋をより明確にし、債務者さまのご負担を最大限軽減することを目的としています。

■「個別の事情に応じた個別解決が合理的である」という判断の理由

案件の多様性:アパマン問題においては、シェアハウスと同じように「定型的な不法行為があった」との裁判所の調停委員会による認定はなされておりません。

例えば、「高値掴み」(改ざんされたレントロールにより高い収益性があると誤認し、適正価格より高い価格で購入したケース)が認められる場合もあれば、認められない場合もあります。

また、<銀行の指示で不動産業者が資料を改ざんして、債務者を騙した>ケースや、<不動産業者が資料を改ざんし、債務者も銀行も騙された>ケース、あるいは<銀行から多額の融資を引き出すために債務者と不動産業者が共同して資料を改ざんした>といったケースなど関係当事者の状況が区々に異なることが判明しております。

司法判断との整合性: 2025年3月末までに確定した11件のアパマン問題に対する個別の判決例では、いずれにおいても当社の損害賠償責任は認められておりません。これは、個別事案ごとに不法行為の有無や当社の関与などを精査する必要があるという当社の認識を裏付けるものです。

公平性の観点: 既に個別の事情に応じての司法判断や和解が成立している案件が多数存在します。これらの案件との公平性を保つためにも、当社が一律解決を選択することは困難であると考えております。

■類似の不動産業者や営業担当者による案件など類型化が可能ではないかとの声について

アパマン融資の対象物件は、古くからある投資物件でシェアハウスのような「新しい商品形態」ではなく、お客さまが投資判断に必要な情報も十分得られます。裁判所の調停委員会においても「定型的な不法行為があった」との認定はなされておりません。

また、不正が確認されたケースであっても、銀行、不動産業者、債務者それぞれの関与状況や、物件の収益性、購入価格の適正性など、個別案件によって関係当事者の状況や不正の内容が区々でございます。

さらに、これまでの個別訴訟における確定判決11件において、いずれも当社の損害賠償責任は認められておりません。これらの司法判断からも、たとえ類似の事案に見えたとしても、一律に当社の責任を認めることはできないという認識でございます。

■金利引き下げの下限を当面1%に下げるという設定の基準や判断、「当面」の期間について

返済困難な債務者さまへの金利引き下げの下限を当面1.0%に設定したのは、物件の収支を黒字化させ、お客さまが約定返済を継続できるよう、より踏み込んだご支援をご提供するためです。

この金利は、当社がお客さまの状況に応じて最大限提案できる負担軽減策の一つであり、お客さまが不動産収益を確保し、より返済の見通しを立てやすくなり、早期解決に寄与するとの判断で設定いたしました。

期間につきましては、出来る限り多くのお客さまとの解決が図れるまでを考えておりますが、お客さまからのご相談状況や金融・経済情勢に応じて変更される可能性がございますので、「当面」と記載させていただいております。

■債務者への督促における「黒字判断」について

物件収支についてですが、弁護団より提供された2022年の家賃収支情報をもとに、一般的には15~20%程度と言われている経費率を30%と設定し、一定の余裕を持たせた黒字水準を、当社で試算したものです。

この推定方法自体は一律ですが、ご返済相談にあたっては、個別に経費率の状況等を考慮しており、一律ではなく、個別の状況に応じてお取扱いをしています。

■今回発表した改善策は、問題の早期解決にどの程度寄与すると考えるか

今回の拡充した改善策は、アパマン問題の早期解決に大きく寄与するものと考えております。特に、これまで解決に至っていなかった多くの組織的交渉先債務者さまに対し、対話を通じた具体的な解決の道筋をより幅広くご提案できるものと考えております。


まとめ

かつて世間を騒がせ、今もなおオーナーとの和解に至らない不正融資問題。

スルガ銀行側と被害者同盟側との主張は平行線をたどっているが、今後どのように解決に向かっていくのか。引き続き動向に注目が集まる。

城東不動産販売株式会社

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