成年後見制度改正で「塩漬け不動産」は動くのか?

公開日 2026年07月01日

成年後見制度改正で「塩漬け不動産」は動くのか? 投資家が知るべき新ルールの正体

3類型から「補助1本」へ、包括的・終身的な制度を見直し

 

高齢の親が所有するアパートを売却したい。相続した収益物件について、相続人の1人に認知症の疑いがある。高齢オーナーから物件を購入しようとしたが、本当に契約してよいのか不安がある。

 

不動産取引の現場では、「成年後見制度」が問題となる場面は少なくありません。

成年後見制度とは、判断能力が低下した本人に代わって、成年後見人などが財産管理や法律行為を支援・代行する制度のことを言います。

不動産は金額が大きく、売買、賃貸、相続、担保設定、修繕契約、管理委託契約など、本人の財産に大きな影響を与える法律行為が多いからです。

その成年後見制度について、6月17日、民法等の一部を改正する法律が成立しました(2年6カ月以内に施行の見通し)。

今回の改正は、単なる福祉制度の見直しではありません。不動産投資家にとっても、物件取得、相続対策、賃貸経営の承継、管理委託、売却戦略に関わる重要な法改正です。あらためて、どのように変化するのか、本記事で一緒に確認しましょう。

「本人保護」と「自己決定の尊重」の両立

現行の成年後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。判断能力を欠く常況にある人には後見、判断能力が著しく不十分な人には保佐、判断能力が不十分な人には補助という仕組みです(民法7条~19条)。

この制度は、判断能力が低下した人の財産を守るために重要な役割を果たしてきました。

たとえば、判断能力が低下した高齢者が不利な契約を結んでしまった場合、成年後見人等が取消しを行うことで本人を保護できます(民法9条、民法13条、民法17条、民法120条1項)。

また、成年後見人には、本人の財産を管理し、財産に関する法律行為について本人を代表する包括的な代理権(個別の同意なしに、本人の財産全般について代理人として行為できる権限)が認められていました(民法859条1項)。

こうした一方で、現行制度には「一度後見が始まると、制度利用をやめるのが難しい」という問題がありました。やめることができるのは、本人が亡くなるか、本人の判断能力が回復するかに限られていたからです。

仮に、不動産売買の場面をきっかけに成年後見制度を利用し始めて、その取引が終了したとしても、一生涯制度を利用し続けなければなりませんでした(当然、報酬も払い続けることになります)。

今回の改正は、この包括的・終身的な制度を見直し、後見・保佐を廃止し、補助制度を中心に再編するものです(民法7条~19条、民法859条1項、民法876条の4、民法876条の9)。

制度趣旨は、本人を保護しつつ、本人の自己決定を必要以上に制限しないことにあります。

※施行日は未定。公布日から最長で2年6カ月以内に施行される見通し

つまり、「この人は後見」「この人は保佐」と大きな類型に入れるのではなく、「この人には、どの法律行為について、どの支援が必要なのか」を個別に判断する制度へ変わるのです。

具体的には、従来の「補助」を中心に据え、判断能力を欠く重い場面については新たに「特定補助人」を付する仕組みが用意されます(後述)。

不動産取引では「同意」と「代理権」が重要

改正後の制度では、家庭裁判所が必要と認める場合、本人が特定の行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。

この対象には、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、相続の承認・放棄、遺産分割、民法602条に定める期間を超える賃貸借などが含まれます(民法13条相当の重要財産行為、民法602条、民法120条1項)。

これは、不動産投資家にとって重要です。高齢の売主が収益アパートを売却する場合、その売主について補助人の同意を要する審判があり、不動産売買が対象行為に含まれていれば、補助人の同意を得ない売買契約は後から取り消される可能性があります(民法120条1項)。

もう1つ重要なのが代理権です。現行制度では、成年後見人には包括的な代理権がありました(民法859条1項)。しかし、改正後は、補助人が当然に本人のすべての不動産取引を代理できるわけではありません。

補助人に代理権が認められるのは、家庭裁判所が特定の法律行為について代理権を付与した場合です(民法876条の4、民法876条の9に相当する代理権付与の再編)。

 

 

たとえば、補助人に「預貯金の払戻し」について代理権があっても、「甲土地の売却」について代理権がなければ、その補助人が売買契約を代理して締結することはできません。

補助人がいるかどうかではなく、「その補助人が、この物件の売却について権限を持っているか」を確認する必要があります(民法99条、民法111条1項2号)。

特定補助人とは何か

一方、改正後の制度では、補助制度を中心にしつつ、判断能力を欠く常況にある人については「特定補助人」を付する仕組みが用意されます。これは、現行の成年後見に近い重い場面を補助制度の中で処理する仕組みです。

ただし、特定補助人は、現行の成年後見人のような包括代理人ではありません。成年後見人には、本人の財産全般について管理・代理する包括的な権限が認められていましたが、改正後は、そのような包括代理を見直し、必要な範囲で本人を支援する方向になります(民法859条1項)。

特定補助人が付されるのは、補助開始の審判を受けた者が、精神上の理由により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、かつ、家庭裁判所が必要と認める場合です。

特定補助人には、一定の取消権の行使、本人に対する意思表示の受領、本人の財産に関する保存行為などの権限が認められます(民法98条の2、民法158条、特定補助人に関する規律)。

不動産取引では、特定補助人が付されている場合、売買契約を誰が締結できるのか、本人がした契約を取り消せるのか、解除通知や催告を誰に送ればよいのかが問題になります。

特に、売買契約の解除、賃料滞納の催告、賃貸借契約の解除、更新拒絶などは、相手方に有効に意思表示が到達することで効力が問題になります(民法97条、民法98条の2)。

したがって、特定補助人がいる場合には、単に「特定補助人が付いている」と確認するだけでは不十分です。その特定補助人が、取消権、意思表示の受領権限、保存行為に関する権限をどの範囲で持っているのかを確認する必要があります(民法98条の2、民法120条1項)。

契約から決済まで『最短3日』のスピード買取!!

契約・決済同日の『一括決済』も可能です!!

城東不動産販売株式会社

~住まいに対する想いを一緒に。~

〒169-0074
東京都新宿区北新宿2-18-10

TEL:03-5937-0580(代表)
FAX:03-5937-0581
Mail:info@0359370391.com